ポストモーテム: ワークスペースへの意図しない自動参加

組織ドメインの扱いにより意図しない参加が生じた事象の経緯と対応です。

この記事について

本稿は、セキュリティ事象の公表フォーマットの雛形です。UNCHAIN株式会社は、利用者への影響が確認された事象について、経緯、対応および影響範囲を公表し、報告いただいた方への謝意をあわせて記載します。実際に発生した事象を公表する際は、概要、発生原因、対応、影響範囲、再発防止策、謝辞、参考情報の順に記載するこの構成を用います。以下の記載は記入例です。日付、報告者名、対象人数、件数、バージョン番号はプレースホルダーのままにしてあり、公表時に実際の値へ置き換えてください。第三者の事業者名を記載する場合は、公表前に当該事業者と調整してください。

概要

Pulseのワークスペースには、同じメールアドレスのドメインを持つ利用者が自動的に参加できる設定があります。この自動参加の判定を、外部のID基盤の事業者から受け取るメールアドレスのドメインの一致のみで行っていたため、組織に管理されていない個人アカウントであっても、ドメインが一致すれば当該組織のワークスペースに参加できる状態でした。

利用者からの報告を受けて調査を行い、ドメインの一致に加えて組織による管理下にあることの確認を必須とする修正を適用しました。調査の結果、実際に管理外のアカウントがワークスペースに参加していた事例は確認されていません。

項目 内容
対象 「同じドメインの利用者の自動参加を許可する」設定を有効にしていたワークスペース
報告日 お問い合わせください
報告者 〔報告者名〕(Pulseの利用者からの報告)
修正日 お問い合わせください
管理外アカウントによる参加の実績 確認されていません
利用者に必要な対応 ありません

発生原因

本事象は、自動参加の判定を外部のID基盤から受け取るメールアドレスのドメインの一致だけで行っていたことにより生じました。ドメインが一致するアカウントは必ずその組織に管理されている、という前提が実際の仕様と合っていませんでした。

経緯

日付 出来事
お問い合わせください 利用者から事象の報告を受領。社内のセキュリティ連絡経路に共有し、開発とサポートで再現を開始
お問い合わせください 本番環境のデータを検索し、管理外のアカウントがワークスペースに参加している事例がないことを確認
お問い合わせください 外部のID基盤の事業者が、現在は同種の管理外アカウントを新規に発行していない一方、既存のものは有効なままであることを確認
お問い合わせください 影響の分析を行い、自動参加の既定の判定に不足があることを特定
お問い合わせください 修正を検証のうえ適用。本番環境のデータを再度検索し、影響がないことを確認
お問い合わせください 報告いただいた利用者へ対応完了を連絡
お問い合わせください 本ポストモーテムを公開

直接の原因

外部のID基盤の事業者は、かつて、組織のドメインと同じメールアドレスを持ちながら、その組織の管理下にない個人アカウントの作成を許容していました。Pulseの自動参加の判定は、メールアドレスのドメインが一致することをもって「その組織の構成員である」とみなしており、当該アカウントが組織の管理下にあるかどうかを確認していませんでした。

前提としていた「組織のドメインのアカウントを持つことは、その組織に管理されていることを意味する」という理解が、実際の仕様と一致していませんでした。

対応

日付 対応内容
お問い合わせください 本番環境のデータを検索し、管理外のアカウントがワークスペースに参加している事例が存在しないことを確認
お問い合わせください 自動参加の判定に、ドメインの一致に加えて組織による管理下にあることの確認を追加。管理外のアカウントは自動参加できないよう変更
お問い合わせください 修正の適用後、本番環境のデータを再度検索し、利用者への影響がないことを確認

調査の方法

本番環境のワークスペースのメンバー一覧を対象に、組織の管理下にないアカウントで参加している利用者を検索しました。修正の適用前後の2回にわたって検索を行い、いずれも該当する利用者は存在しませんでした。

影響範囲

  • 影響を受けうるのは、「同じドメインの利用者の自動参加を許可する」設定を有効にしていたワークスペースです。この設定を無効にしていたワークスペースは、招待による参加のみを受け付けるため、本事象の対象外です。
  • 調査の範囲では、管理外のアカウントによるワークスペースへの参加は確認されていません。報告いただいた利用者のワークスペース以外でデータが参照された形跡もありません。
  • 利用者による対応は必要ありません。
自動参加の設定について

ドメインの一致による自動参加は、社内の利用を広げるうえでは便利な設定ですが、参加できる範囲を組織側で完全に制御できるとは限りません。機微な会議のノートを扱うワークスペースでは、自動参加を無効にし、招待による参加のみを受け付ける運用をご検討ください。設定の場所はワークスペースで説明しています。

個人情報保護法上の報告・通知との関係

個人データの漏えい、滅失もしくは毀損またはそのおそれが生じた場合、事案の内容によっては、個人情報の保護に関する法律第26条に基づく個人情報保護委員会への報告(速報および確報)と本人への通知が必要になります。報告の対象となる事態は同法施行規則第7条に、報告の期限は同規則第8条に、本人への通知事項は同規則第10条に定められています。同規則が定める事態には「発生したおそれがある」場合も含まれるため、実際に参照された記録が確認できない場合でも、到達しうる状態にあったかどうかの検討が必要です。本記入例の事象では、管理外アカウントによる参加の事実が確認されなかったため、漏えい等に該当する事態は生じていないものとして整理しています。

公表の根拠について

本ページは、UNCHAIN株式会社の自主的な取り組みとして公開しているものです。民間事業者に対してセキュリティ事象の公表を一般的に義務づける法律はありません。法令上の義務として生じうるのは、個人情報保護法第26条に基づく個人情報保護委員会への報告および本人への通知、電気通信事業者として届出を行っている場合の通信の秘密の漏えい等に関する報告、ならびに法人のお客様との契約に基づく通知です。

再発防止策

  1. 判定条件の明示化 — 自動参加の判定を、メールアドレスのドメインの一致と、組織による管理下にあることの確認の両方を満たす場合に限定しました。
  2. 外部の仕様に依存する前提の洗い出し — 外部のID基盤の仕様について暗黙の前提を置いている箇所を洗い出し、実際の仕様と照合しました。
  3. 既定値の見直し — ワークスペースを新規に作成した際の自動参加の既定値と、管理者向けの説明を見直しました。
  4. 利用者からの報告経路の周知 — 利用者から寄せられたセキュリティに関する報告を、社内の対応経路へ確実につなぐ手順を整理しました。

謝辞

責任ある開示を行っていただいた〔報告者名〕に感謝します。事象の再現と修正の確認にご協力いただきました。

参考情報

  • 脆弱性開示ポリシー — 調査を許可する範囲、報告の方法、報告者への対応
  • ワークスペース — 自動参加の設定とメンバーの管理
  • セキュリティ体制 — 平時の技術的・組織的な安全管理措置
  • 本件に関するお問い合わせ: tharada@the-unchain.com/脆弱性のご報告: tharada@the-unchain.com
外部の参照先について

報告者または外部の研究者が公開した技術情報がある場合は、その参照先をここに記載します。掲載の可否と時期は、公開者と調整してください。

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